機能性表示食品の事後チェック指針、ポイントを簡単に解説

2020年4月に運用が開始した消費者庁の「機能性表示食品の事後チェック指針」では、景品表示法上で問題となる可能性のある事例が示されています。参照元>機能性表示食品申請

そこで、機能性表示食品とはどんな商品なのか、この指針は具体的にどんな内容なのか、消費者が商品を選択する際に気を付けるべきポイントは何かについて、分かりやすく解説します。

機能性表示食品は、体脂肪を減らす、血圧を下げる、血糖値の上昇を抑えるなど、健康維持や健康増進に効果がある機能を有する食品を指し、2015年の食品表示法の施行によって誕生した保健機能食品の一種です。特定保健用食品(トクホ)も保健機能食品のひとつですが、トクホは、商品に表示されている安全性や効果を食品安全委員会など国の機関が事前に審査しなければ発売できないのに対し、機能性表示食品は、安全性や効果を示す科学的根拠などの資料を販売日の60日前までに消費者庁に届け出るだけでよく、国の審査は必要ありません。

書類に不備がなく、消費者庁で認可されれば、事業者は機能性表示食品として発売することができます。事業者にとっては機能性表示食品の方が認可を受けやすく、消費者庁によれば、2021年3月末現在で、消費者庁への届け出数は3933件もあります。

機能性表示食品のパッケージには、「機能性表示食品」の表示、届け出番号のほかに、科学的根拠を示した機能、一日当たりの摂取目安量、摂取にあたっての注意事項が記載されています。そのほか、パッケージには、こうした機能の安全性や効果は国の審査を受けたわけではない旨も記載されていますが、目立たない場所に小さな文字で書かれてある商品が少なくないため、消費者に、効果があるかのような誤解を与えるという問題が指摘されていました。

また食品安全委員会で安全性が確認できないとされ、特定保健用食品(トクホ)の申請を却下された商品でも、機能性表示食品として届け出をし、販売することが可能であるなどの矛盾もありました。

『機能性表示食品はパッケージの表示を確認して買おう』

そこで消費者庁では、事業者に対し、消費者に誤解を与えるような表示や広告をしないよう、「機能性表示食品に対する食品表示等関係法令に基づく事後的規制(事後チェック)の透明性の確保等に関する指針」(事後チェック指針)を策定し、2020年4月から運用を開始しました。

これは、この指針に基づいて、すでに届け出が受理された商品を事業者自身に自主的に点検してもらうことを目的としています。この指針に沿って表示や届け出をしていれば、景品表示法上では問題とされません。指針では大きく分けて、「広告表示」と「科学的根拠」の考えについて触れています。

以下では、それぞれについて指針の内容を簡単に解説します。

まず、広告表示については、機能性表示食品を摂取するだけで身体の組織機能の問題が解消されるかのような誤解を与える表示は禁止されています。例えば「この食品を服用するだけで、体脂肪がみるみる減少する」といった表示は、景品表示法上で問題となる可能性があります。

また医薬品や医薬部外品で認可されているような効果をうたってはいけないので、「血圧が高めの人におススメ」「花粉症に効果がある」といった表示はしてはいけません。摂取による効果があったという実験結果についても、実際の結果より過大に表示してはいけないほか、医師や専門家の推奨については、特定の疾患を表示して、機能性表示食品にその疾病の予防や治癒の効果があるかのように消費者に思わせる表示はできないことになっています。

さらに、消費者の体験談については、「個人の感想です」といった表示は目立つように記載しなければならないほか、事業者が消費者庁に届け出した機能や効果の範囲を逸脱していない内容でなければなりません。キャッチコピーにおいても、「一か月で体脂肪が減少」「売上一位」などといった表示は、その根拠があいまいなため、景品表示法に触れる可能性があります。

科学的根拠として認められない事例については、効果を示す客観的な査読付き論文が存在しないこと、ある一定の条件のもとでは効果があるかもしれないが、誰にでも効果があるわけではない場合にそのことを表示していないこと、効果を否定する論文について網羅せず、都合の良い論文やデータのみを科学的根拠としているなど、事後チェック指針では、細かく示されています。

事後チェック指針は、機能性表示食品を販売する事業者に対して出されたものですが、消費者自身も機能性表示食品を利用する際には、注意しておくポイントがあります。まず機能性表示食品は、特定保健用食品(トクホ)と違って、安全性や効果について審査された商品ではないこと、未成年や妊産婦、授乳婦以外で、疾病に罹患していない人を対象とした食品であることを知っておく必要があります。

そのうえで、健康維持のためには、運動、栄養、休養をバランスよく取ることを心がけましょう。機能性表示食品のパッケージには「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを」と書かれてありますが、栄養成分表示などの情報も記載されていますので、自分の食生活を見直し、自分に必要な食品を選択することが大切です。

次に、機能性表示食品は、たくさん摂取すれば効果がより期待できるような食品ではないことにも注意が必要です。摂取する時には、パッケージに表示された注意事項を確認し、一日あたりの摂取目安量や摂取方法に従わなければなりません。

体調に異変を感じた時にはすぐに摂取を中止し、医師に相談すると同時に、健康被害が起きた時には、パッケージに記載された事業者に連絡をします。

『機能性表示食品の効果にはエビデンスがある』

事業者が消費者庁に届け出たすべての機能性表示食品についての情報は、消費者庁のホームページで公開されています。公開されている内容は、安全性の評価、機能性の評価、生産・製造・品質の管理体制、健康被害の情報です。

健康被害を未然に防止するためにも、機能性表示食品の情報をよく理解したうえで、その食品を摂取するよう心掛けることが、消費者に求められています。

2015年以降、次々に発売される機能性表示食品ですが、安全性や効果について消費者に誤解を与えないよう、事後チェック指針の運用が開始されました。誇大な広告表示をしてはいけないことや科学的根拠があいまいな効果を表示してはいけないことなどが示されていますが、消費者自身も、健康被害に遭わないよう、機能性表示食品とは何かをよく知ったうえで、商品を購入することが大切です。